今年も色々なことがありました。驚くようなニュースに希望を抱いたり、失望したり。そんな2025年も余すところあと少し。大切な人に贈る本を選びながら、自分や身の回りのことを振り返ってみるのもいいかもしれません。
■子どもに

レビューア:飯野真由美
今まで読んだ本の中で最も印象に残っているキャラクター:廣嶋玲子作『十年屋』(静山社)シリーズに登場する、魔法使い十年屋の執事猫カラシ。
恐竜に乗って図書館へお話を聞きに行くよ。恐竜専用道路があるんだ。図書館に着いたけど、恐竜は中に入れてもらえなかった。でも、お話が聞きたくて、窓から顔を突っこんだら、図書館中がガタガタ揺れちゃった。館長は怒ったけど、恐竜を移動図書館バスに任命して、本を運んでもらうことにした。子供も恐竜も幸せになった。
!おすすめポイント! 柔らかいタッチの素朴な絵。子供たちが恐竜をかばい、仲よしなのが楽しい。館長にしかられたときの恐竜の泣き顔がとてもかわいい。各国の「移動図書館」紹介ポスター付きで、ロバやラクダや船が本を運ぶ国もあるとわかる。

「きょうりゅうバスで がっこうへ」(台湾)
リウ・スーユエン 文/リン・シャオペイ 絵 石田 稔 訳 世界文化ブックス 刊
子供たちは恐竜に乗って学校へ行くよ。マンションの窓からだって乗れるんだ! でも恐竜は大きすぎて、橋やビルを壊してしまう。たくさん請求書が届いて困った学校は、恐竜を外へださないことにした。恐竜は悲しくて泣いた。すると、涙のプールができて、恐竜はプールへ入るためのすべり台になり、子供たちの遊び場になった。
!おすすめポイント! 温かみのある絵で、子供たちが恐竜をなぐさめる場面もあり、やさしさに満ちた絵本。相手を思いやることを学べる。各国の「学校の行き方」紹介ポスター付きで、水牛やモーターボートに乗って学校へ通う国もあるとわかる。
■友人に

レビューア:よしい あけみ
映像化してほしい本:
『マーリ・アルメイダの七つの月
上・下』。死者の視点で描く内戦下スリランカ。ファンタジー、ミステリー、ホラー、政治色の強いブラックコメディが交錯した2022年度ブッカー賞受賞作。美しい自然と混沌を映像で見たい。
著者たちが実際にガザの一般家庭を訪ね、台所で話を聞き、一緒に料理を作った記録。「周辺地域よりも鮮やかで、スパイスが効いていて華麗」というガザ料理は、古代から交易路の結節点だった土地ならではの豊かさが特徴だという。レシピの合間のコラムとともに、人々の日常への敬意に満ちたルポタージュ。2013年初版、2025年6月に日本語版刊行。
!おすすめポイント! カラフルなサラダ、多様な煮込み料理やパン類、魚介料理のバリエーションなど、実際に作れるレシピが満載。「遠い異国での悲劇」ではなく「味わえる記憶」として、ガザの食文化の豊かさと鮮やかさを知ることができる。料理好きはもちろん、歴史や文化に関心のある友人へ、食を通じて世界を理解する視点を贈れる一冊。
■恋人/パートナーに

レビューア:久米佑天
今まで読んだ本の中で最も印象に残っているキャラクター:浅田次郎著『蒼穹の昴』の主人公、李春児。どんな困難に直面しても希望を失わず、強い意志で道を切り開こうとする姿に心打たれた。
人並外れた洞察力を持つ香港の伝説的刑事クワンの人生を逆年代記で描いた本格派ミステリー短編集。正義感に満ち溢れたクワンは香港返還前後の社会的混乱、警察内部の腐敗、権力と市民の対立などのタブー的問題に、ときには法の穴をかいくぐり挑んでいく。
!おすすめポイント! ミステリー初心者も上級者も老若男女誰もが次のページをめくる手が止まらなくなる、そんな一冊だ。クワンが事件を解決するための糸口を探す発想はどれも予想外。その突拍子もない手腕に脱帽し、事件解決後には不思議な達成感と爽快感を覚える。また香港が抱えてきた社会的問題にも理解を深めることができ、それぞれの事件で描かれるクワンとその仲間たちの人間模様も必見!
「すべての、白いものたちの」(韓国)
ハン・ガン 著 斎藤 真理子 訳 河出書房新社 刊
半年間ポーランドに滞在したことで、著者はホロコースト後に再建されたワルシャワの街を目にする。破壊と再生の記憶が亡き姉の不在と相まって、喪失感で胸がいっぱいになる。白にまつわる65の短い断片的な物語は、詩のように凝縮された言葉で綴られている。
!おすすめポイント! 人は白という色にどのようなイメージを持っているだろうか。純粋、儚さ、美しさ……。白は上書きすればすぐに他の色に染まってしまう。本書はその脆さに人間の本質、生と死、過去と未来といった哲学的なテーマを重ね合わせた散文集となっている。ページをめくりながら、正解のない問いについてじっくりと思索にふけってみる時間も忙しい現代人には必要なはずだ。
■家族に
「ブッダが教えた本当のやさしさ」(スリランカ)
アルボムッレ・スマナサーラ 著 宝島社 刊

やさしさとは、与えるものでも、求めるものでもなく、自然のネットワークの中に、ただ存在するもの――スリランカ出身の高僧が、「やさしさ」について語った書。現在、欧米にも広く浸透しているマインドフルネスの基礎を成す思想についても語られている。

レビューア:川嶋ミチ
今まで読んだ本の中で最も装丁が美しいと思う本:ダニエル・キイス著『アルジャーノンに花束を』1989年改訂版、ISBN-10:4152033932。書店で一目惚れして即購入。なんの前知識もなく手に取ったのですが、内容もすばらしかった。
!おすすめポイント! 穏やかな語り口で、読んでいてほっとさせられる。自分の嫌いな人、自分を嫌っている人の幸せまで祈ることのできるやさしい世界では、戦争なんて起こりえないのです! まずは自分と周りの家族から、やさしさの輪を。※現在、宝島社版は販売を終了していますが、Kindle Unlimitedで電子版が読めます。
「窓を開けて目を閉じる」(ベトナム)
グエン・ゴック・トゥアン 著 Fineday Corp. スタッフ、松原 正英 訳
ベトナムの小さな村で、やさしい家族や隣人に囲まれて暮らしている、十歳の少年、ドゥン。彼の身の回りでは、今日もいろいろなことが起こる。学校での友だちや先生とのやり取りや、仲間との森への冒険の顛末など、その一つひとつを思い起こし、味わう。窓を開けて目を閉じて。スウェーデンの翻訳児童文学賞、ピーターパン賞受賞作品。
!おすすめポイント! 戦争の傷跡や近しい人の死など、十歳の少年の目から見た世界は、必ずしも穢れのない楽しいものばかりではなく、悲しいことも起こるけれど、自分の子どもの頃のことや、親になった時の喜びを思い起こさせてくれる作品。主人公の父親の言葉で、ゴダイゴの名曲「ビューティフル・ネーム」が脳内再生された。
■自分に

レビューア:目崎ゆき
今まで読んだ本の中で最も印象に残っているキャラクター:『赤毛のアン』のヒロインのアン・シャーリー。天涯孤独の少女が、抜群の想像力と知性で、幸せな人生を築いていく姿に深い感銘を受けた。いつか、アンの住んでいるプリンス・エドワード島を訪れるのが夢。
「クローバー」(韓国)
ナ・ヘリム著 キム・キョンスク訳 講談社 刊

第15回チャンピ青少年文学賞受賞作(韓国出版社チャンビ創設のヤングアダルト小説の文学賞)。まず、物語のプロローグに登場するのは黒猫で、セリフもある。なんだか長い歴史の中をずっと生きてきたミステリアスな存在のようで、ただの黒猫ではなさそうな予感がする。この物語の主人公は中学生のジョンインで、苦しい日々の生活のさなかにこの黒猫と出会う。実はこの黒猫、なんと、悪魔だった。
!おすすめポイント! ジャケ買いが本にもあるとすれば、本作はその候補になりうる。漫画のようなイラストに、目を引くポップな色使い。そして、描かれているのがしっぽの長い黒猫となれば、猫好きなら例外なく手に取ってしまうだろう。ちなみに、うちにいるのは白猫だが、私はジャケ買いしてしまった。呼び込み効果抜群の表紙も愛でてほしい。
相手の好みがよくわからない?
それならばAmazonギフトカードを贈って好きな作品を自分で選んでもらうのもいいでしょう。
この年末年始は、おいしいお菓子やリーディングライトなどの読書に使える小物と一緒に、大切な人に「ただゆっくり本を読んで過ごすひととき」を贈ってみてはいかがでしょう? あなたとあなたの大切な人が豊かな時間を過ごせますように!
Merry Christmas & Happy New Year! アジア書堂編集部より



