正直、この企画が始まるまでは私は韓国ドラマを観たことが全くなかった。そのため本記事の内容は、韓国ドラママニアの方々には物足りないかもしれない。だが私のような初心者だからこそ、これから韓国ドラマに興味を持つきっかけづくりができるのではないか。そう思って筆をとった。
本記事では、比較的最近話題となった韓国ドラマ『愛のあとにくるもの』、『私の夫と結婚して』、『トッケビ~君がくれた愛しい日々~』、『アンナ』を中心に私なりに比較・考察したい。
韓国ドラマの基本軸
まず4つの作品を見て思った共通点がいくつかある。まず愛の描き方が激しいこと。日本ではそこまでしないのにと思う愛情表現が散見された。例えば、韓国ドラマでよく見られる復讐をとってみても途中で全く妥協せず、徹底的に相手を突き詰める。
それほど愛とは深いものであり、それを裏切ることには大きな代償が伴うのだ。「愛している」の一言でも、俳優の表情や声の出し方から日本でよくある軽々しい恋愛関係は想起されない。
恋愛では相手から癒される時もあるし、逆に傷つけられる時もある。関係がこじれた際には相手の立場になって親身になることも大事だが、時には感情を表出させることも必要な時がある。さまざまな試練に直面するからこそ、恋愛には責任も大きく伴うのだ。これが韓国ドラマを観ていて思ったひとつの教訓だ。
といっても私自身は男性であり、恋愛経験が恐ろしく少ない。そのためここまで偉そうに述べてきた意見も実情とはそぐわないかもしれないが、あくまでも新鮮な一意見として参考にしてもらえれば幸いである。
次に最近の韓国ドラマは映像が綺麗。K-POPなどで韓国のエンタメ業界が先進的なのは知っていたが、細かいところまで映像が凝られているのが分かった。映像があまりにも綺麗すぎると逆に人工的で不自然に感じる時もあるのだが、韓国ドラマの映像はそこまでやりすぎていない。
というのも映像がいい意味で使い分けられているのが分かったからだ。人間模様を描いた恋愛ものやヒューマンドラマにはあえて映像美をナチュラルに仕上げ、ファンタジーやアクションシーンではまるでCGさながらの綺麗な映像美を持ってくるあたり、流石だった。
あなたはどれが好み? タイプ別韓国ドラマ比較・考察
さあ韓国ドラマの基本軸が分かったところで、ここからは具体的にそれぞれのドラマを比較してみたい。是非、あなたの気分や好みに合うドラマを見つけてほしい。
| タイトル | ジャンル | メインテーマ | 見どころ |
| 愛のあとにくるもの | 日本の昭和を彷彿とさせる王道ロマンス | 王道の恋愛、再会 | 辻仁成の世界観を韓国の感性で演出。王道ロマンスには誰もが胸キュンしてしまう? |
| 私の夫と結婚して | 復讐系ロマンス(タイムスリップあり) | 裏切り、復讐と罰則 | 過去をやり直そうとタイムスリップをしてまでも徹底的に相手を突き詰める復讐劇 |
| トッケビ~君がくれた愛しい日々~ | ラブファンタジー | 輪廻転生、妖怪、哲学 | 韓国神話の妖怪トッケビによる愉快な異世界を舞台に、韓国の独特な死生観や哲学的な問いについて考えさせられる |
| アンナ | サスペンス | アイデンティティ、嘘と真実 | 実際の学歴詐称事件をもとに、アイデンティティについて再考を促しながら、韓国社会の闇をあぶり出す |

©Coupang Play ドラマ『愛のあとにくるもの』一場面より
まず私のような韓国ドラマ初心者には、日韓合作の作品『愛のあとにくるもの』がお勧めだ。内容も王道の恋愛もので日本人にも馴染みがある。ここで韓国ドラマを観るのに日本的感性は求めないという人にも朗報だ。
本作では哲学的な珠玉の名言が散りばめられている。何を隠そう日本の有名な恋愛ドラマを色々と見てきた私が断言しよう、本作は韓国的感性による愛情表現がなければ成り立たない。
また日本でも人気のある坂口健太郎が韓国で支持される理由が分かり、イ・セヨンは素朴なメイクでナチュラルな演技をしており、その日本語力からプロ意識の高さがうかがえた。このように造られすぎていない女優は男性受けもよいのではないか。
この作品にハマったあなたには『その年、私たちは』や『ブラームスは好きですか?』もおすすめだ。どちらも過去の恋愛が現在に多大な影響を与えている点が共通している。他にも『私たちのブルース』は静かで心安らぐ風景や季節感を感じる映像美が本作と似ている。
次に哲学といえば、『トッケビ~君がくれた愛しい日々~』も哲学的な問いに満ちている。輪廻転生をはじめ生と死について考えを巡らしたいなど、現実離れし過ぎたファンタジーやコミカルすぎるコメディに苦手意識のある方には、きっとグサッと胸にささるものがあるはずだ。
無邪気で天真爛漫なごく普通の女子高生を演じきったキム・ゴウンに目を奪われたかと思うと、トッケビ役のコン・ユの哀愁漂う闇を抱えた笑みが印象的。時に強がるが素直で純粋な少女は、成人男性が思わず守りたいと思えるキャラクターに違いない。
類似作品としては、『ホテルデルーナ~月明かりの恋人~』や『九尾狐伝』が挙げられる。いずれも神話的・霊的存在である登場人物が人間との交流の中で心動かされていく様子を描いている。また生と死、運命といった哲学的な問題にも思いを馳せられる。
そして韓国ドラマといえば、やはり復讐。その王道のテーマを描きながら、タイムスリップなど変化球的な設定も入れた『私の夫と結婚して』を観ると、韓国の復讐劇の激しさに圧倒され、スリル満点で観終えた頃には爽快感が残っているはずだ。
主演のパク・ミニョンは綺麗な顔立ちだけでなく、眼鏡をかけると雰囲気がガラッと変わるカメレオン俳優的な魅力を持ち合わせており、ナ・イヌはワイルドな体格が男らしく爽やかだった。華奢で繊細な人が多い日本人俳優と違って、アスリートのような鍛え上げられた体は男性から見ても惚れ惚れした。
こちらがお好みの方には、『アゲイン・マイ・ライフ~巨悪に挑む検事~』や『ペントハウス』などもおすすめ。緻密な策略を練った復讐劇が見どころだ。

©Coupang Play ドラマ『アンナ』一場面より
最後に当たり前だが、韓国にも実話を基にした社会派エンターテイメントなるものが存在する。『アンナ』はそのひとつだが、実話と紐づけることで韓国の社会的構造や歴史についても理解を深められる作品だ。単なる娯楽的要素だけでなく、教養も身に着けたい方におすすめだ。
俳優陣も元アイドルのぺ・スジは深みのある演技で視聴者を魅了し、最初はクールな役柄だったキム・ジュンハンは物語が進んでいく過程で徐々にその仮面がはがされていくという人間の二面性を見事に演じきった。
そして本作を観たら、『SKYキャッスル~上流階級の妻たち~』も観て韓国ドラマの沼にはまってみよう。社会的地位を気にしながら、嘘によりアイデンティティが崩れていく女性たちの葛藤が描かれている。
ちなみに『SKYキャッスル~上流階級の妻たち~』は日本のリメイク版を観たことがあり、なかなか後味が良い作品とは言えないが、ハマる人にはきっとハマるはずだ。
以上、長々と書いてきたが、この辺でまとめに入ることにする。韓国ドラマには共通軸のようなものがある気がしたが、私が見た4作品以外にも実に多様な作品が存在する。そのどれもが個性的で日本人からすると新鮮な要素が必ずあるはずだ。是非、本記事を参考にして、お気に入りの韓国ドラマを見つけてみてほしい。
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