韓国歴代観客動員数4位を記録した大作ヒューマンドラマ
韓国の現代史を学べ、人生の価値について再考させられ、最後の主演の演技に涙腺が崩壊する
主人公ユン・ドクスは幼い頃、朝鮮戦争中に父と妹と生き別れになった後、父の代わりに懸命に家族を支える決意をする。
西ドイツの炭鉱やベトナム戦争の戦地に出稼ぎに行き、戦禍の中で片足を失ってしまった。
その後韓国に戻ってからも一家の店を継ぎ、家族の生活を支え続けた。
年老いてくると、テレビ番組でかつて生き別れた妹を探し始める。晩年、果たして彼が自分の人生を回想して感じたものとは？
韓国の現代史
正直、私は本作を見るまで韓国の歴史について詳しく知らなかった。もちろん朝鮮戦争については知っていたが、ベトナム戦争にも参加していたとは初耳だった。
劇中、後に現代（Hyundai）の創業者となる人物や韓国の有名なデザイナー、アンドレ・キムまで登場してきたが、リアリティを出すこういう演出、個人的に好き。
いまや一人当たりGDPで日本を上回るほど経済成長した韓国だが、かつて日本も経験したように米軍からもらったチョコレートを子どもたちが奪い合うほど貧しい時代もあったのだと再認識した。
また、朝鮮戦争後韓国政府が西ドイツと協定を結び、多くの韓国人が炭鉱労働者としてドイツに渡ったという事実も多くの日本人が知らないことだろう。作中では、主人公がドイツでの生活では慣れない文化の中、命の危険にさらされながらも生活のために必死で働く姿が印象的だった。
不確かであるからこそ意義深い人生の価値と主演の名演技
戦地に何度も趣き、大黒柱として家族を支え続けた主人公の生きざまを見ていると、平和ボケしたこちらが恥ずかしくなってくるほど、人生の価値について考えさせられた。
果たして人はどのように生きれば死ぬときに後悔せずにいられるのだろうか。夢を成し遂げる？ 巨万の富を得る？ 誰よりも徳を積む？ 健康で長生きする？ そのどれもが正解とは言い切れない。
人生には波があり、誰もが幸福だけでなく悲しみも経験する。達成感だけでなく挫折も味わう。私は波風が立っていない安定した状態よりも、このような浮き沈みにこそ人間性の真価が見える気がする。
どんなに成功しても思い上がることなく、逆にどんなに苦しくても悪事を働くなど間違った方向に行かない。この当たり前のことを愚直に実行し続けて、今できる努力を積み重ねている人間はきっと人生の最後も後悔しないのではないか。
ドクスは晩年、自分の人生を振り返って、「本当に つらかった」とこぼし、泣き崩れる。その際の主演ファン・ジョンミンの迫真の演技に胸打たれた。
涙をたたえながら言い放ったその一言には、想像を絶するほどの苦労が凝縮されているような気がして、最後まで家族のために働き続けた一生には尊敬の意を抱かざるを得ない。
自分に当てはめてみると、果たして私は今を全力で生きているだろうか。どう美化しようとしてみても、その答えは否だ。今自分にできることは何かをよく考え、ドクスのような誇り高い人生を生きたいものだ。
ユン・ジェギュン監督
ファン・ジョンミン主演 第52回大鐘賞で、作品賞など合計10部門を受賞。観客動員数は1,400万人を超え、韓国映画の歴代観客動員数4位を記録。
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