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ドラマレビュー「コール・ミー・ベイ ~お金じゃ買えない私の幸せ~」

インド版『キューティ・ブロンド』? 超富裕層から転落したお嬢様の痛快コメディ

落ち込んだ時、元気が欲しい時に観たいドラマがある。Amazon Prime Videoで大ヒットし、インドで1位、50カ国でトップ10入りを果たしたお嬢様の成長物語だ。

いきなりですが、どしゃぶりの夜に、突然家から追い出されたことってありますか? 私はないです。

この物語は、スーパーお嬢様のヒロイン「ベイ」が、インドの首都デリー南部の大豪邸から、ヴィトンのバッグと共に追い出され、ずぶ濡れになるところから始まる。ほんの数分前まで、プライベートジェットにヘリまであるようなセレブ生活だったのに。一体彼女はなにをやらかしたんだ?

超お金持ちの家に生まれたベイは、美人で明るく、SNSとファッションが大好きなインフルエンサー。大金持ちチョードリー家の息子と結婚するも、仕事で忙しい夫に誕生日もほったらかしにされ、ブランドバッグたちを話し相手にSNS投稿するロンリーな日々。

そんな時、ジムでセクシーなトレーナー”プリンス”と意気投合。ホテルのスイートルームに2人で籠もるも、夫とメディアに見つかり、スキャンダルとして新聞報道されてしまう。

一夜でバズった、お嬢様の正義感

兄や母にも見捨てられたベイは、警察署で出会った女性から「海のそばの魚臭い場所にあんたの未来がある」と予言され、アラビア海に面する大都市ムンバイへ向かう。

定宿の5つ星ホテルにチェックインするも、クレジットカードを止められていて追い出される。が、ラッキーなことに、ホテルの見習いサイラにホステルを紹介してもらえた。併設のバーで飲みながら、『サティヤジット・セン(SS)に告白』という暴露系番組を見ている時、彼女の運命を変える出来事が起こる。

べろんべろんに酔っ払っていたベイは、司会者SSが「国産品愛用主義スワデシを心に誓っている」と語るのを見て激しく反応、こうぶちまける。

『コール・ミー・ベイ ~お金じゃ買えない私の幸せ~』本編より引用)

その様子を動画に撮った誰かがSNSでシェアすると、瞬く間に拡散されて大バズり。

SSの同僚で、硬派な報道番組を手がけるニールは、なにがなんでも視聴率優先のSSとは正反対の生真面目なジャーナリスト。ベイの動画には真実があり、彼女にはジャーナリストとしての資質があると見込んで、有給インターンとして採用する。

SSのベイいじめは容赦ないが、匿名の女優から、有名な実業家による性暴力を暴いてほしいと依頼が来て、正義感あふれるベイは立ち上がる。

『コール・ミー・ベイ』VS『キューティー・ブロンド』、ベイとエルの共通点

このドラマを観ていて思い出したのが、2001年に公開された米国のコメディ映画『キューティー・ブロンド』だ。続編、スピンオフ、ミュージカルが制作され、公開から25年経った今年、前日譚も登場予定という息の長い人気を誇る。

ベイが映像を見ただけでSSが着ているブランドを特定するシーンは、映画で証人の男性がエルの靴を一目でプラダと見抜き、エルがそこから彼の嘘を暴くシーンにどこか通じる。どちらもファッション知識が武器になるのだ。

エルは「ブロンド娘はオツムが弱い」という差別的なステレオタイプと闘うが、ベイは「この国では容姿がいい人は過小評価される」ことを痛感している。

二人とも純粋で正義感に強く、貧富の差や社会的立場で人を判断しない。いつも明るく、逆境に正面から立ち向かう彼女たちの姿には大いに勇気づけられる。女性同士の連帯も重要なテーマで、本作では「#behencode(シスターコード)」というハッシュタグも登場する。そしてなによりファッションが大好き。

サリーに括り付けられてる鍵に注目!

ファッションへの注目といえば、第4話のさりげないシーンも印象に残った。

高級ブランドでかためたSSの住まいは高級アパートメント、内装もかなりモダン。そこで彼の両親はインドらしく手食している。

SSが帰宅した途端にナイフとフォークに持ちかえるのだが、その時目が釘付けになったのは、母親が着ているサーリーに括り付けられた「鍵」の束。彼らの故郷西ベンガル特有の着こなしで、サリーのパッルー(肩から垂れる布)に鍵を括り付けて、重り代わりにしているのだ。わー、面白い!やってみたい!

SSは頑張って今の地位を築いたが、実は相当背伸びをして、それを家族にも押し付けているのがわかる。

落ち込んだ日の特効薬、シーズン2も楽しみ!

このドラマは2024年9月の配信開始直後から大ヒットし、インドでランキング1位になったほか、米国や英国をはじめ50カ国でトップ10入りした。

主役を演じたアナーニャ・パンデイは、ボリウッド映画の “Student of the Year 2”で2019年にデビューし、フィルムフェア新人女優賞を受賞。2025年のクリスマスには映画 “Tu Meri Main Tera Main Tera Tu Meri”が公開、最新作の”Chand Mera Dil”は2026年中に公開予定と大活躍中だ。

SS役を演じたのは、国際的なコメディアンとして人気のヴィール・ダース、インド系米国人の歌手リサ・ミシュラがSSの恋人でTPRのプロデューサー役で出演しているのも話題になった。

プロデューサーは、ボリウッドを代表するヒットメーカー、カラン・ジョーハル。監督のコリン・ディクーニャは、『PK』『ミルカ』『シークレット・スーパースター』など数々のヒット作で助監督を務め、本作で長編ドラマ監督として注目を集めた。

脚本を手がけたイシタ・モトイラは、『フォー・モア・ショット・プリーズ!』など、強い女性キャラクターを描くことで知られる脚本家。本作でも、ベイの成長を巧みに描いている。

正直に言えば、私の普段の好みはもっとシリアスな作品だ。でも『コール・ミー・ベイ』は、落ち込んだ時用にとっておきたいパワードリンクのようなドラマ。どこまでも現実離れしたインドのお嬢様の世界を見ているだけでも元気が出てくる。

ボーナス映像も充実していて、「ベイワールド」に浸れる中毒性の高い仕掛けも楽しい。 シーズン1の大ヒットを受けて、早々にシーズン2の制作が決定したのも納得の面白さ。ベイの次の冒険が楽しみだ。


ドラマ『コール・ミー・ベイ ~お金じゃ買えない私の幸せ~』

Amazon Prime Videoでの視聴はこちら

コリン・ディクーニャ監督  アナーニャ・パンデイ主演

2024年9月からAmazon Prime Videoで配信中のインド・Dharmatic Entertainment制作オリジナルドラマ。Amazonプライム会員なら見放題。全8話、各話36~44分。ヒンディー語(日本語字幕あり)。

Amazon Primeでは、さまざまなアジアドラマがお楽しみいただけます。登録はこちらから!

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吉井 朱美

ライター、食文化研究家、味わう読書家。 幼い頃から「なんでも食べ、なんでも読む」を信条に育つ。 留学先の豪州・アデレードの学生寮で多彩なスパイスの香りと予期せぬ出会いを経験。それをきっかけに南インドへ渡り、10年以上滞在。 文章を通して、さまざまな境界を越えながら世界を味わい直す旅を続けている。

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