書籍

アジア書堂レビューアおすすめ「本のおくりもの」

2024年も余すところあと少しとなり、もうじき、クリスマスとお正月が訪れます。クリスマスといえば、贈り物のシーズン。今年は大切な人に、本のおくりものをしてみませんか?

レビューア:飯野真由美
十歳の時の愛読書:『メアリー・ポピンズ』シリーズ。4冊全部読みました。全然やさしくなくて、つんけんしているのに、いざというときは助けてくれる頼もしい魔女。
人生で最も影響を受けた一冊:『ナルニア国物語』。このような本を訳す仕事をしたいと決意させてくれた作品。また、このような物語を創作したいとも思わせてくれた。

「バートルのこころのはな」(モンゴル)

イチンノロブ・ガンバートル 文/バーサンスレン・ボロル 絵 津田紀子 訳 小学館 刊

ホブス山のふもとに咲くこころの花の朝露を集めて飲むと長生きできるという話を聞き、おかあさんに飲んでほしくて、バートルは夜中に家をとびだし朝露を集めに行きます。暗い森の中は化け物が出そうでこわかったけれど、夜明けにこころの花が咲く場所を見つけて、朝露を少しだけ集められました。お茶に入れてみんなで飲みました。

!おすすめポイント! 真っ暗な夜の森で化け物がいるように思えてこわくてたまらないところと、夜が明けて見えたこころの花の美しさがいい。草原や森、テントのような住居の絵から、遊牧民の暮らしにふれられる。母親への恩がテーマ。

「空とぶ馬と七人のきょうだい」(モンゴル)

イチンノロブ・ガンバートル 文/バーサンスレン・ボロル 絵 津田紀子 訳 廣済堂あかつき 刊

空にまだ星がなかった頃のお話。美しい7人の王女が鳥の王ハンガリドに空の世界へ連れさられてしまい、賢者の7人の息子が翼のある馬に乗って王女を助けにいきます。ハンガリドをやっつけて王女達を救いだしましたが、馬が傷ついて帰れなくなります。息子達と王女達は結婚して北斗七星になり、たくさんの星が生まれました。

!おすすめポイント! ハンガリドに連れさられた王女達の表情がみな違うのがいい。また、7人の息子達はそれぞれ違う特徴を持っていて、力を合わせることで敵をやっつけられたことがポイント。星の起源にまつわるロマンチックな物語。

「トヤのひっこし」(モンゴル)

イチンノロブ・ガンバートル 文/バーサンスレン・ボロル 絵 津田紀子 訳 福音館書店 刊

春の終わりに、トヤの家族は引っ越すことになりました。住んでいたゲルをたたみ、らくだに荷物を積んで、牛や羊やヤギといっしょに、馬に乗って移動します。野宿をしたりゴビ砂漠をわたったり嵐にあったりと、大変なこともありました。でも、山を越えて、ついに目的地に着きました。きれいな湖と草がたくさんある場所でした。

!おすすめポイント! 横長の本を開くと、見開きでパノラマの風景が見られる。文に描かれている人がどこにいるかを探すのも楽しい。広々とした草原や虹の絵が美しい。夜、外で寝た恐怖や、嵐の苦労も感じられる。遊牧民の生き方がわかる。


「ルバイヤート」「ルバーイヤート」(イラン)

オマル・ハイヤーム 著 小川 亮作 訳 岩波書店 刊/オマル・ハイヤーム 著 岡田 恵美子 訳 平凡社 刊


ルバイヤートとは、ペルシャ語で「四行詩」を意味し、本書は11・12世紀のペルシア(現在のイラン)で活躍したオマル・ハイヤームの四行詩集を集めたもの。官能的で美しい詩には酒が頻繁に登場する。イスラム教は飲酒を禁じているが、7世紀にアラブの攻撃を受ける前のペルシア王国ではゾロアスター教が信仰され、ワイン文化が花開いていた。イスラム教に改宗させられても、その精神は息づいていたのだろう。

レビューア:よしい あけみ
十歳の時の愛読書:エリザベス・グージ作『まぼろしの白馬』。食べ物の描写が詳細で、マーマデュークのいる台所は今も憧れ。「ハリー・ポッター」シリーズに最も影響を与えた作品だとか。
人生で最も影響を受けた一冊:修士論文のテーマに選んだ『カーマ・スートラ』。人生で一番向き合った本です。

!おすすめポイント! 美酒を飲んでいるような気分にさせられる、味わい深い詩集で、特にワイン好きにはたまらないはず。老舗甲州ワイナリー「丸藤葡萄酒工業」のブランドネームは「ルバイヤート」。セットでプレゼントするのもいいかも。邦訳は多数あるが、おすすめは小川亮作訳の岩波文庫版か、岡田恵美子訳の平凡社ライブラリー版。


レビューア:久米佑天
好きな作家:山崎豊子、浅田次郎
人生で初めて一人で読んだ本:『ハリー・ポッターと賢者の石』

「すべての瞬間が君だった きらきら輝いていた僕たちの時間」(韓国)

ハ・テワン 著 呉 永雅 訳 マガジンハウス 刊

著者が相手に対する思いやりや愛情を詩の形でエッセイ風にまとめたもので、恋愛に限らず人生のさまざまなターニングポイントにおいて助けになる名言に溢れている。思わず共感を誘う語り口で読者に語りかけ、心が折れそうになった時や逃げ出しそうになった時に心を奮い立たせてくれる。

!おすすめポイント!  辛いことがあった時、誰かにすがりたい気持ちになるのは当然だ。本書はその相手が書籍であってもいいと思わせてくれる金言と明言が散りばめられている。人生の「良き相棒」として本棚の片隅に置いておきたくなる、そんな作品だ。丁寧な装丁と美しい挿絵で、贈り物にもぴったり!

「夕霧花園」(マレーシア)

陳 團英 著 宮崎  一郎 訳 彩流社 刊

舞台は第二次世界大戦後のマレーシア。主人公のユンリンは戦時中、日本軍の強制収容所で妹を失うなど壮絶な経験をした。戦後、妹の夢であった日本庭園を造るため、謎めいた日本人庭師、有朋に弟子入りする。二人の複雑な関係を通じて、人と人とのつながり、戦争が残した負の遺産について問う感動大作。

!おすすめポイント!  時として恋は、過去のトラウマや傷から立ち直るきっかけとなり、和解にも結び付く。本書では、戦争で傷を負った主人公と戦争加害者と同じ国籍の日本人庭師が互いに惹かれ合っていく過程を通じて、恋とは相手に対する先入観や負の感情を超えた次元で抑制しえない本能に則った純粋な営みであることに気づかされる。


「ようこそ、ヒュナム洞書店へ」(韓国)

ファン・ボルム 著 牧野美加 訳 集英社 刊

住宅街にひっそりと佇む小さな本屋、ヒュナム洞書店は、午後1時にオープン。テーブルに座ってコーヒーを飲みながら読書もできます。店長のヨンジュとバリスタのミンジュンを中心に、常連客たちも巻き込み繰り広げられる人間模様。それぞれが悩みを抱え、それでも前に進んでいく普通の人々。人生と本を読むことの意味を問う、ヒューマンドラマ。

!おすすめポイント! 本好きの親や兄弟に本を贈りたいと思っても、結構悩むもの。自分一人で読むならいいけれど、どぎつい描写が抜き打ちみたいに出てくる本を家族にすすめるのって、なんか気まずい。かといって、全部読んでからプレゼントする? その点、これは安心できる一冊。それでいて、深い! 書店を舞台にした話だけあって、さまざまな本が登場し、読んでいくうちに「次に読みたい本」のリストが完成する。

レビューア:川嶋ミチ
好きな作家:芥川龍之介、夢野久作、チャールズ・ブコウスキー。今の時代に彼らが生きていたら、どんな作品を書いたのかと、時々想像します。
人生で初めて一人で読んだ本:『はじめてのおつかい』『リボンの騎士』

「紙の動物園」(中国・アメリカ)

ケン・リュウ 著 古沢嘉通 訳 早川書房 刊

包装紙で折った動物が命を吹き込まれ動き出す。母は幼い息子のために小さな動物園をこしらえた(『紙の動物園』)。小惑星との衝突により消滅した地球。人類は新たなる安住の地へと長い旅を続けている。日本人唯一の生き残りである大翔は、宇宙船上で、両親と過ごした最後の日々を思い起こす(『もののあはれ』)。中国系アメリカ人SF作家、ケン・リュウの短編集。

!おすすめポイント! 家族の間でやりとりされる感情って、はたから見るよりもずっと複雑。「ごめんなさい」「ありがとう」そんな単純な言葉で言い表せない思いを家族に伝えたい時、この本はきっと橋渡しをしてくれる。


レビューア:目崎ゆき
好きな作家:ジョージ・エリオット
人生で最も影響を受けた一冊:『赤毛のアン』

「大丈夫じゃないのに大丈夫なふりをした」(韓国)

クルベウ(Geul Bae Woo)著 藤田麗子 訳 ダイヤモンド社 刊

『大丈夫じゃないのに大丈夫なふりをした』 表紙より引用)

韓国の著者、クウベルによるエッセイ集で、現代社会で悩みを抱える我々に向け、問題の解決の糸口となるアドバイスが、やさしい言葉で綴られている。その語り口は、悩み深い我々の心によりそい、もう無理しなくていいんだよと、気持ちを楽にしてくれる。そのアドバイスの的確さは、読みながら、何度もうなずいてしまうほどだ。

!おすすめポイント! 32篇のエッセイのタイトルから、自分が気になるテーマから読むことができ、自分の悩みや不安の解消に何が必要なのか、ぼんやりと自分で考えていたことが、エッセイを読んで、間違っていなかったのだと思えるところが良い。人生の迷いをクリアにしてくれる本。


相手の好みがよくわからない?

それならばAmazonギフトカードを贈って好きな作品を自分で選んでもらうのもいいでしょう。

他のプレゼントもすてきだけれど、今年のクリスマスは大切な人に「他のことはせず、ただゆっくり本を読んで過ごすひととき」をお菓子やお酒、温かいお茶と一緒に贈ってみましょう! あなたの気持ちが伝わりますように!

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