映画・ドラマ

ドラマレビュー「私の夫と結婚して」

秀逸な脚本によるスリル満点の大ヒット復讐ドラマ

過激な描写と復讐ものに鉄板の設定が世界中のファンを虜にし、豪華な俳優陣も見どころのひとつ。

主人公のカン・ジウォンは病気の闘病中、夫パク・ミンファンと親友チョン・スミンの浮気が発覚し、その後彼らにより命を奪われたかのように思われた。だが、目を覚ますと、 10年前の2013年 の世界が目の前に広がっていた。

そこでジウォンは、前世の記憶を駆使して未来を変えようと奮起する。まず、ミンファンとスミンに復讐することを決意した。ジウォンは、彼らを陥れようと巧妙な計画を立て、人生を滅茶苦茶にした相手を次から次へと自分と同じ目に合わせようとする。

そんな彼女の前に突如現れるのが、勤務先の部長ユ・ジヒョク。彼はジウォンの理解者となり、彼女の復讐を支えるだけでなく、その存在自体が希望の光となっていった。果たしてジウォンは、過去を新たに歩み直しながら、真の幸せを掴めるのか。

復讐系ドラマの本場韓国が生んだ過激な描写と斬新な設定

初めて1クール全16話の韓国ドラマを観たが、観る前に抱いていた韓国ドラマのイメージを良い意味ではるかに上回ってきた。国民性なのかもしれないが復讐の精神は、韓国人の心に代々息づいているようだ。

そもそも悪事を働いた者にそれ相応の罰を与えるのは当然のことであり、最後の方は爽快感さえ覚えた。

復讐系の韓国映画として有名な『オールド・ボーイ』『親切なクムジャさん』は周りも味方につけながら復讐を果たそうとするが、本作は現実を変えようと躍起になるタイムスリップした主人公ほぼ一人による復讐劇だ。

そして復讐するための策略も巧妙なのだが、ひとつひとつのシーンが日本のドラマより過激な気がした。男性だけでなく女性も、日本の『半沢直樹』など比べようもないほど徹底的に相手を攻撃する。

韓国ドラマ初心者の私はそのような過激なシーンは、最初は正直苦手だったが、徐々に慣れてくると自分自身も気分がエキサイトしてきてスリル満点で楽しめた。

そして復讐系のドラマにぴったりの設定。タイムスリップして過去をやり直して未来を変えるというものだが、現在日本でも多くの漫画やアニメでよく見られるため馴染みがある。

私は元々タイムスリップ系は苦手意識があったが、今作は自然と物語についていけた。きっとあくまでも現実に近い物語で、SFやファンタジー的な架空要素が少なかったからだろう。

私自身の過去を振り返ってみても、やり直したい機会は何度もあった。きっと誰しもが、多かれ少なかれ同じ思いを抱えていることだろう。

「私の夫と結婚して」本編より引用)

この台詞に見られるように、皆の願いを代弁するかのような運命改変の物語が多くの人の心をつかんで離さない本作の魅力のひとつなのだろう。

魅力あふれる俳優陣

主演のパク・ミニョンは端正な顔立ちをしているだけでなく、眼鏡をかけるだけでガラッと印象が変わるカメレオン俳優的な要素も持ち合わせている。感情が込み上げてくるシーン、特に亡き父へのメッセージを心の中で読み上げるシーンが印象的だった。

他の代表作には、『7日の王妃』『トキメキ☆成均館スキャンダル』『キム秘書はいったい、なぜ?』『彼女の私生活』などがある。

もう一人の主演のナ・イヌは189cmの抜群のプロポーションを誇る。韓国の男性俳優は兵役制度があるため、日本の俳優よりも筋肉質でワイルドな体格をしている印象を持った。本作では主人公の唯一の理解者として、温かみのある眼差しが魅力的だった。

他の代表作には、『哲仁王后~俺がクイーン!?~』『王女ピョンガン 月が浮かぶ川』『ジンクスの恋人』などがある。日本でも2025年7月から放送されるドラマ『初恋DOGs』に出演するらしく、興味を持った。

監督パク・ウォングクの他の代表作には、『朝鮮心医ユ・セプン』、『チェックメイト!~正義の番人~』『レディの品格』などがある。


ドラマ『私の夫と結婚して』

パク・ウォングク監督

パク・ミニョン、ナ・イヌ主演

韓国の同名ウェブ小説が原作。2024年1月1日にAmazonプライムビデオで配信がスタート。AmazonプライムビデオランキングでNo.1を獲得した後も、常にランキングの上位に位置し続け、SNSでもトレンド入りした。アジア圏だけでなくヨーロッパやアメリカでも一大旋風を巻き起こした。1話約1時間、全16話。

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久米佑天

東京大学文学部卒業後、大手学習教材制作会社にて英語教材の校正・翻訳に携わる。現在は株式会社Aプラス専属校正・翻訳者としてさまざまなジャンルの文書と向き合う。これまでの訳書に『心理学超全史〈上・下〉―年代でたどる心理学のすべて』と『アンヌンに思いを馳せて:ウィリアム・ジョーンズの臨死体験に基づく物語』がある。

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