愛の本質を問う日韓合作の王道恋愛ドラマ
恋愛もの好きならもちろん、老若男女誰もが楽しめる哲学的な名言に溢れた直球ラブストーリーは、どこか90年代の恋愛ドラマを思わせる。主演二人にも注目。
本作は辻仁成とコン・ジヨンの同名小説を原作としたラブストーリーだ。メインの舞台は井の頭公園。日本人大学生の青木潤吾と韓国人留学生のチェ・ホンはひょんなきっかけで日本で出会い恋に落ちるが、ある日すれ違いから突然別れることになり、ホンは韓国へ帰国する。
その後、ホンは日本での思い出を胸に秘めながら、新たな人生を歩んでいた。しかし5年後、潤吾と韓国で偶然再会を果たし、心が揺れ動く。潤吾もまた、ホンと日本で過ごした時を忘れられず、別れを後悔し続けていた。
果たして二人は再び結ばれるのか、それとも別々の道を歩むのか?
王道の恋愛ドラマに散りばめられた珠玉の名言
ストーリー自体は恋愛ものにありがちな展開で特に新鮮味は感じないかもしれない。本作の魅力は何かというと、それはセリフである。
哲学的ともいえる名言のいくつかを味わってみよう。
感情は変化する 変化しながら生きていくんだ
(「愛のあとにくるもの」本編より引用)
日本での潤吾との日々を忘れたくても忘れられないまま、新たな道を煩悶としながら進んでいたホン。そんなホンのよそよそしさに気づいた新しい恋人がかけた一言。
私は悲しい出来事や気になることがあると、頭がそのことで一杯になってしまい、他のことが手につかなくなることが多い。例えば、数年前の愛犬の死。今でも悲しみがどっと押し寄せてくることもあるが、当時よりも悲しさと折り合いをつけられている。
その当時は、他人から前向きな言葉をかけられてもムッとした気持ちになったものだ。だがこのような言葉を誰かから聞いていれば少しは気が楽になったに違いない。
きっと悲しさは忘れようとして忘れるものではなく、その負の感情とじっくりと向き合いつつ、その後も大小色々なことが起きて自然と紛れていきながら、自分の内面で「そっと飼いならしていく」ものなのだろう。
“言葉にしなくたって ほんとの気持ちは自然と伝わるものだから”
“でも言葉にしてほしいの いくら気持ちが分かっていても 何度でも聞きたい言葉だってあるの”
“例えば?”
“愛してる…って言葉”
(「愛のあとにくるもの」本編より引用)
この主演二人のやり取りを聞いて日本の不朽の恋愛名作ドラマ『愛していると言ってくれ』を思い出した。その人にとって極めて大事な気持ちは、言葉にして伝えないと相手は分かってくれない。
私も口下手な人間だが、家族にさえ「言わないと伝わらないな」と感じることが多々ある。こと恋愛ともなると、他人同士なのだから、尚更だろう。
主演二人が配役にベストマッチ

©Coupang Play
主演二人は自然体で役を演じきっている。きっと適役とはこのことなのだろう。まず、ホン役のイ・セヨン。私は作られ過ぎていないナチュラルな顔がどちらかというと好みなため、K-POPのアイドルなどを見て魅力的に思うことは正直少なかった。
だがイ・セヨンは自然な素朴さを残しつつも元々の綺麗さを強調するようなメイクと表情をしており、魅力的だった。私個人の考えでは、俳優はその人にしか出せない個性が大事だと思うからだ。
そして何といってもそのプロ意識の高さには舌を巻いた。まず日本語が棒読みでもなく、それでいて完全にネイティブではない発音をしており、それがとても自然だった。
やはり俳優は語学力の高さもひとつの売りになると改めて感じた。今までも『大地の子』での上川隆也の中国語やハリウッド映画での真田広之の英語に対しても、同じように思ってきた。
そして劇中で歌うシーンがあるが、歌も歌手顔負けの声量ともなるともうお手上げだ。昨今の日本人の俳優(特に女優)も、どこか無個性で「アイドル化」しているように感じる。売り出すからには、イ・セヨンのように個性を主張しつつ、語学や歌に長けているなどスペックの高い俳優を日本からももっと輩出してほしいものだ。
他の代表作は、『赤い袖先』、『王になった男』、『烈女パク氏契約結婚伝』など。
次に潤吾役の坂口健太郎。最近日本ではあまり見ないなと思っていたが、韓国で活躍しているそうだ。言われてみれば、顔だちは韓流系で長身小顔、スタイルが良い。韓国で受けるのも納得がいった。
演技も日本での別れ際に感情をぶつけるシーンや韓国での偶然の再会で複雑な感情が表情に滲み出たシーンなどにその確かな実力が垣間見れた。韓国語の勉強も熱心にしているとのことで、今後日本だけでなく韓国での国際的な活躍を期待したい。
演出に携わったムン・ヒョンソンのその他の代表作には『ソウル・バイブス』、『王様の事件手帖』、『ハナ 奇跡の46日間』などがある。
ドラマ『愛のあとにくるもの』
ムン・ヒョンソン 監督 坂口健太郎、イ・セヨン 主演

©Coupang Play
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