2015年当時、インド映画史上最高の興行収入を叩きだした壮大な冒険ファンタジー
壮大な映像美とインド特有の世界観に惹きこまれ、迫力満点のアクションシーンに圧倒される。
架空の王国、マヒシュマティの王位を巡る争いが本作のテーマ。主人公のジヴドゥは、幼少期に川で拾われ、実の親を知らないまま育ての親に育てられた。だが成長していくにつれて、自分の出自を少しづつ知るようになる。
実の母が息子を守るために川に自分を流し、実の父が国王であったことを。この事実を知ったジヴドゥは自分が王国を守る後継者であり、王位を取り戻す宿命を負っていることを悟る。
そこから冒険の旅が始まるが、その過程でジヴドゥは仲間との友情を確かめ、時に裏切られながら心身ともに成長し、最後に悪の王と闘う決心をする。その闘いの様子は続編で詳しく描かれる。
規格外のスケールの映像美とインドの独特な世界観

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正直普段は、現実離れしたファンタジーは苦手意識があり、本作も内容が頭に入っていきづらい面もあったが、それを上回る映像美と異国情緒あふれる世界観で楽しむことができた。
インド国内で最高額の予算で制作された本作の映像は、ハリウッド映画の迫力と遜色ない。高度なVFX技術を駆使した映像は、個人的には日本の『ゴジラ-1.0』の映像と否応なく比較してしまった。
ゲームの世界にも疎い私は、人工的過ぎる映像には違和感を感じることもあるが、VFXを上手く取り入れれば、迫力と盛り上がりが格段に増し、作品をより高次元なグレードに引き上げてくれるのだと再確認した。
例えば序盤で主人公が滝を登るシーン。崖から崖へと飛び移り、断崖の僅かな岩場に足をかけて進んでいく。崖から落ちてしまうこともあるのだが、その際は私も主人公になりきって心臓がバクバクし、最高のスリルを味わえた。
また背景では非常に独特で異国情緒あふれる「これぞインド!」といえる音楽がミュージカル風にコミカルに流れる。壮大な冒険アクションに目が行きがちだが、背景に流れるインド音楽が作品をシリアスにし過ぎないいい働きをしている。楽曲以外にも、聞きなれないテルグ語が作品の「インド感」を増強させている。
私が本作以外に見た唯一のインド映画は『きっと、うまくいく』だ。本作はインド国内ではそれよりも興行収入が上回ったそうだが、日本人受けするのはどちらなのだろうと思ったりもして、国民性の違いも感じた。
ハリウッド並みのアクションシーンと俳優の演技力

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実を言うと、本作を見る前にハリウッドの『ジョン・ウィック』シリーズを見ていたところだったのだが、それを見た後でも本作のアクションシーンは遜色ないどころかより泥臭く、生々しい面があって魅力的に映った。
武器もハリウッド映画では銃をスマートに使用することが多いが、本作ではカッター付き戦車、見たこともない巨大な弓、インド風のデザインが施された独特な剣などが登場し、そのどれもが迫力満点のアクションシーンに抜群のスパイスを加えている。
日本の『るろうに剣心』シリーズが好きな私は、本作のアクションシーンの中でも剣さばきが気に入った。日本では日本刀を使った剣術が古くから息づいているが、インドにも伝統的な剣術の歴史があるようで興味が湧いた。
少し調べてみると、古くは古代ヴェーダ時代に剣を使った武道に関する記録があり、中世には現在のインド式武道の形が形成され、近代になり英国の植民地時代で一時は武道が衰退したものの、1920年代頃から伝統武道復興の流れが起こり、次第に復活していったとのこと。
そして忘れてはならないのが、激しいアクションシーンを演じきった俳優たちの演技力だ。主演を務めたプラバースは主にテルグ語映画で活動している。2013年、『MIRCHI/ミルチ』でナンディ賞の主演男優賞を受賞した。アクションシーンだけでなく、悪の王と闘う決意を決めた最後の表情の演技が光っていた。
本作の監督、S・S・ラージャマウリは、主にファンタジーのテルグ語映画で有名。本作以外の代表作には『マガディーラ 勇者転生』や『マッキー』、そして近年大ヒットとなった『RRR』などがある。国内外で多数の賞を受賞しており、その芸術活動での貢献から、2016年にはインドで民間人に授与される勲章の中で第4級に当たるパドマ・シュリー勲章を授与された。
公式サイト:http://www.baahubali-movie.com/densetsutanjou/sp/index.html
S・S・ラージャマウリ監督
プラバース主演
制作当時、インド映画史上最高額の予算で制作され、公開直後から話題を集め、当時のインド映画史上最高の興行収入を叩きだした。国内外で高い評価を得て、ナショナル・フィルム・アワード 最優秀作品賞やフィルムフェア・アワード テルグ語作品賞などさまざまな名誉ある賞を受賞している。

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